心臓弁膜症の治療と処置

世界中で数百万人の人々が心臓弁膜症を抱えています。心臓弁に異常がある場合、多くの場合は修復や置換が可能です。心臓弁膜症の症状を自覚した場合は、医師に相談してください。

世界的には、心臓弁膜症の増加には次の 2 つの理由があります 1

  • 変性弁膜症は先進国で人口が高齢化するに従って発生する
  • 途上国ではリウマチ性心疾患に対する適切な治療法がない

心臓弁膜症は年齢が上がるほど発生しやすくなるため、心臓弁置換術を必要とする人の数は時間の経過とともに増加しています。研究者によると、2050 年までに世界中で毎年 80 万件以上の心臓弁手術が実施されると推定されています1、 2

心臓弁膜症の治療薬

症状を緩和し、心臓弁の不全悪化を防ぐために、医師から服薬を指示されることがあります。一般的な治療薬には以下があります。

  • 利尿薬 - 過剰な体液を体内から排出しやすくする
  • 抗不整脈薬 - 安定した心拍リズムの確保を支援する
  • 血管拡張薬およびアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 - 血管壁の筋肉を弛緩させることで血管を広げ、血流を増加させる
  • Β遮断薬 - 高血圧を治療し、心拍を遅くする
  • 血液希釈剤(抗凝固剤) - 血液中で血栓が形成されるリスクを低減する

薬剤は指示に従って服用してください。質問がある場合は医師に相談してください。

心臓弁修復術

多くの患者さんの場合、外科手術によって心臓弁を修復することができます。医師は、あなたの心臓弁を修復するために以下のいずれかの技法を使用する場合があります。

弁形成術(経皮的):これは、硬い(狭窄性のある)心臓弁を開くために行われます。手技中には、医師が小さく細いチューブ(カテーテル)を大腿上部(鼠径部)の血管に挿入し、血管内を通して心臓まで進めます。カテーテルが硬い弁に到達したら、医師は、弁のフラップ(弁尖)が押し開かれるまでカテーテルの先端のバルーンを膨らませます。その後、バルーンを収縮させてカテーテルを取り外します。

交連切開術:これは、僧帽弁狭窄症を治療するための心臓切開手術の一種です。弁を開くために、外科医が僧帽弁の弁尖からカルシウム沈着物やその他の瘢痕組織を除去します。外科医は、弁構造の一部を切除して心臓弁が正常に開閉するようにすることもできます。

弁輪形成術:心臓弁の基部または弁輪の組織を修復するために行われます。弁輪が膨張して拡張し、心臓弁の後方に血液が漏れる(逆流する)ことがあります。外科医は既存の弁輪にリング(またはバンド)を縫合します。医師は弁輪形成術のみを行う、または他の技術と組み合わせて心臓弁を修復することができます。

このページでは、別の種類の僧帽弁修復術についてさらに詳しく説明します。

心臓弁置換術

心臓弁を置換するには、いくつかの方法があります。

  • 開心術による外科的心臓弁置換術を行います。この手術では、外科医が胸の骨(胸骨)を切開し、心臓に直接手が届くようにします。
  • 肋骨の間に小さな切開をして治療する方法。
  • 経カテーテルの心臓弁置換術または修復術 - 3 つのオプションのうち最も侵襲性が低い方法です。大腿上部、または心尖、鎖骨下などに小さな切開をして挿入された細いチューブを介して供給されます。
外科的心臓弁置換術

多くの場合、医師は損傷した弁を取り除いて人工弁を所定の位置に埋め込む手術を推奨します。この方法は実施例が多いため、ほとんどの主要病院では心臓弁置換術が一般的な方法となっています。

置換術に使用する人工弁には、生体弁と機械弁の 2 種類があります。どちらも、自然で健康な心臓弁の機能を模倣するように設計されています。心臓弁の血行動態性能は重要であり、手術後の生活の質に影響を与えます(「血行動態」とは、血液が心臓弁を通ってどのくらい効率よく流れるかを表す用語です)。

医師が以下の項目に基づいて適切な弁を選択します。

  • 健康状態(心臓の疾患を含む)
  • 服用している薬剤
  • 年齢
  • ライフスタイル

生体弁

生体弁は動物組織またはヒト組織から作られています。この組織は通常、ブタの心臓弁またはウシの心臓組織から採取されますが、ヒトのドナーから採取される場合もあります。動物またはヒトのドナーから組織を切除したら、組織を保存するために化学的な処理が行われます。

生体弁は機械弁ほど長く使用できない場合があります。そのかわり、抗凝固剤を生涯使用する必要はありません。

機械弁

機械弁は、自然な心臓弁を模して慎重に設計されています。自然な心臓弁と同様に、心拍ごとに開閉し、心臓に適切な血流が得られます。

機械弁は生涯にわたり使用できるように設計されていますが、抗凝固剤と呼ばれる血液の凝固を抑制する薬剤を毎日服用する必要があります。

経カテーテルによる弁の修理または置換

心臓弁置換術や修復術を行うための開心術に適合しない患者さんも多数いるため、経カテーテル処置が選択肢になる場合もあります。

経カテーテル法は開心術ではありません。外科医は通常、大腿の付け根に近い部分の血管をわずかに切開して心臓までのアクセスを確保します。置換弁または置換デバイスは、非常に薄くなるように折りたたまれています。これを中空チューブ(カテーテル)に挿入し、血管を通して心臓まで進めます。医師はイメージング技術を使用して、血管を経由して心臓までカテーテルを誘導し、心臓弁まで到達させます。

経カテーテル処置には以下が含まれます。

  • 僧帽弁に対する僧帽弁修復術
  • 大動脈弁に対する大動脈弁置換術

これらの処置の間、全身麻酔を投与する場合があります。

この処置では、静注(IV)により鎮静薬と鎮痛薬を投与するのが一般的です。カテーテルを挿入する部位にも局所麻酔薬が投与されるため、通常は処置中に患者さんが痛みを感じることはありません。

選択肢に関する相談

最適な選択肢については、医師に相談してください。医師の指示に従って、心臓の治療を受けてください。

 

 

References

1. Cardio Pulse Articles. Eur Heart J. 2015;36:325–332. doi.org/10.1093/eurheartj/ehu483.
2. Huygens SA, Goossens LM, van Erkelens JA, et al. How much does a heart valve implantation cost and what are the health care costs afterwards? Open Heart. 2018;5:e000672. doi.org/10.1136/openhrt-2017-000672.

記載されている情報は、専門家の助言に代わるものではなく、医療診断または治療を目的としたものではありません。適切な医学的助言については、医師または有資格の医療従事者にご相談ください。

AM-CV-JP-WEB-2011-Rev.A